警備員指導教育責任者について

はじめに

警備の仕事に関心があり、警備員の求人を探している方でしたら、警備員の求人の中に「警備員指導教育責任者」を募集しているものがあるのを見かけたことがあると思います。

 

この、「警備員指導教育責任者」とはどのような仕事なのでしょうか。

 

今回は、「警備員指導教育責任者」の仕事内容や資格の取得方法などについて紹介します。

警備員指導教育責任者とは


警備会社は営業所で取り扱う警備業務区分ごとに、警備員の指導および教育に関する計画を作成し、それを実施する責任者を選任し、管轄の公安委員会に届け出なければなりません。(警備業法22条)

 

この責任者が警備員指導教育責任者で、国家資格の警備員指導教育責任者資格者証を保有している人の中から選任されます。
警備員指導教育責任者資格者証は警備業務区分に応じ下記の4種類があります。

 

1、警備員指導教育責任者資格者証1号警備業務

(事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等の施設における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務)

2、警備員指導教育責任者資格者証2号警備業務

(人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務)

3、警備員指導教育責任者資格者証3号警備業務

(運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務)

4、警備員指導教育責任者資格者証4号警備業務

(人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務)

 

例えば一つの営業所で1号警備業務と2号警備業務を行う場合、1号警備業務の警備員指導教育責任者証の保有者と2号警備業務の警備員指導教育責任者証の保有者を警備員指導教育責任者として選任する必要があります。

 

ただし、一人で複数の警備業務区分の警備員指導教育責任者資格者証を保有している人がいる場合には、その人を複数の警備業務区分の警備員指導教育責任者をとして選任することもできます。

 

このように警備会社の営業所には最低でも1人の警備員指導教育責任者を選任する必要があるため、警備業界ではとても需要の高い資格なのです。

警備員指導教育責任者の仕事内容

警備員指導教育責任者の職務は警備業法施行規則に下記の通り定められています。

 

1、指導計画書を作成し、その計画書に基づき警備員を実地に指導し、及びその記録を作成すること。
2、教育計画書を作成し、及びそれに基づく警備員教育の実施を管理すること。
3、書類その他警備員教育の実施に関する記録について監督すること。
4、警備員の指導及び教育について警備業者に必要な助言をすること。

 

このように警備会社の営業所において所属する警備員に対する教育や指導、現場管理などを行いますが、法定教育の実施や法定備付書類の管理など非常に責任のある仕事を任せられることもあります。

警備員指導教育責任者になるには

警備員指導教育責任者になるには、下記のいずれかの条件を満たして、都道府県公安委員会から警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けることが必要です。

 

1、都道府県公安委員会が行う警備員指導教育責任者講習を受講し、修了考査に合格した者
2、公安委員会が、1に掲げる者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者

 

2については雑踏警備等に従事していた警察官経験者が該当しますが、刑事や鑑識、警察事務等の職種であった場合は1の条件を満たさねばなりません。

 

ですから一般的には1の条件を満たして資格を得ることになります。

警備員指導教育責任者講習とは


警備員指導教育責任者講習は都道府県公安委員会によって開催され(都道府県警備業協会に委託されることが多い)、下記の2種類があり、それぞれに受講要件があります。

 

1、新規取得講習(新規で資格取得する人を対象とした講習)
受講するためには次の要件のいずれかを満たす必要があります。

 

①受講する警備区分の業務について最近5年間に通算3年以上従事している者
②受講する警備区分の警備業務検定1級に合格している者
③受講する警備区分の警備業務検定2級に合格してから1年以上継続してその警備区分の業務に従事している者
④公安委員会が上記に掲げる者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者
⑤受講する警備区分の旧検定(警備員検定)1級に合格している者
⑥受講する警備区分の旧検定(警備員検定)2級に合格してから1年以上継続してその警備区分の業務に従事している者

 

2、追加取得講習 (すでに資格を所有している人が別な警備区分の資格を取得するための講習)

受講するためには受講希望の警備業務区分以外の資格者証を取得している(取得講習の修了証明書を取得している)ことに加えて、新規取得講習の受講要件のいずれかを満たす必要があります。

 

それぞれの講習の受講時間と受講料および終了考査の合格基準は下記のようになっています。

 

終了考査の合格発表は即日行われ、合格であれば修了証明書が交付されますので、その後都道府県公安委員会に資格者証の交付を申請します(申請手数料9,800円)。

 

もし不合格であった場合は、再試験ではなく再度講習から受け直しとなります。合格率は80%程度です。

現任指導教育責任者講習とは

営業所で警備業務の区分ごとに選任されている警備員指導教育責任者は、警備業務の実務現場に即した最新の知識や情報を修得するため、定期的に(3年に1回)公安委員会の行う講習を受ける必要があります。

 

講習時間5時限(1日間)受講料5,000円です。

 

講習は警備業務区分ごとに行われるため、複数の警備業務区分の警備員指導教育責任者に選任されている場合はそれぞれの講習を受ける必要があります。

 

なお、警備員指導教育責任者の有資格者であっても警備員指導教育責任者に選任されていなければ講習に参加する必要はありません。

警備員指導教育責任者と警備業法違反

警備員指導教育責任者は、警備会社の営業所における警備員への指導および教育の責任者であるため、公安員会に警備業法違反を指摘された場合には処分を受けることがあります。

 

事例が多い警備業法違反の事例は次のようなものがあります。

 

 

1、警備員への教育懈怠
警備業法では警備業者に対して、警備員が新任するとき、また現任の警備員にも年度ごとに教育を行う義務を規定していますが(第21条)、人員不足などの理由で新任教育をせずに警備現場に配置し業務をさせたなどの事例があります。
この違反に関与した指導教育責任者には警備員指導教育責任者資格者証の返納、警備会社には営業停止が命じられることがあります。

 

2、教育実施簿への虚偽記載
上記の警備員への教育懈怠を隠ぺいするために、法定備付書類である教育実施簿に実際には行っていない教育を行ったと虚偽を記載する事例があります。
この違反に関与した指導教育責任者には警備員指導教育責任者資格者証の返納、警備会社には警備業の認定取り消しが命じられることがあります。

 

警備員指導教育責任者になるメリット

警備会社は営業所で取り扱う警備業務区分ごとに警備員指導教育責任者を選任しなければならず、もし選任した人が離職や長期病欠した時は、14日以内に新たな警備員指導教育責任者を選任せねばなりません。

 

ですから、各警備会社は警備員指導教育責任者資格者証の保有者を必要としているのです。ちなみに警備員指導教育責任者資格者証の交付数と保有者数は下の表のとおりとなっています。

 

その他、警備員指導教育責任者になることには次のようなメリットがあります。

 

1、警備員指導教育責任者になると営業所での警備員の教育や指導又は管理業務が仕事の中心となり、現場で警備をすることが少なくなるため、体力の負担が少なく高齢になっても仕事を続けられます。

 

2、警備員指導教育責任者資格者証の保有者に対して資格手当を支給している警備会社が多く、警備員指導教育責任者に選任されれば職責に応じて一般の警備員よりも高い給料をもらえる警備会社がほとんどです。

 

もちろん担当できる仕事と責任が広がることでモチベーションアップにもつながりますし、現在の職場に満足してない人なら、この資格を生かして転職を成功させキャリアアップを実現することもできるでしょう。

まとめ

私たちが安全安心な生活を送るために、いろいろな場所で昼夜を問わず警備員の方が働いてくれていて、その仕事は多岐にわたっています。

 

そして、その中でも専門性の高い警備員指導教育責任者は警備会社が警備業務を行うために必要不可欠でありとても重要な存在です。

 

なので、警備の仕事をする方は警備員指導教育責任者を目指してみてはいかがでしょうか。