警備業法とは

はじめに

警備員は、色々な現場で犯罪や事故の警戒・防止を業務としています。

 

あまり知られていませんが、警備員や警備会社は、警備業法といった日本独自の法律に則って運営されています。 今回はこの警備業法についてみていきたいと思います。

 

 

警備業法はどんな法律なのか

警備業法とは、警備業について必要な規制を定め、警備業務の実施の適正を図ることを目的とした法律になります。

 

この法律において「警備業務」と定義されているものは、1号業務~4号業務までの4種類に分かれており、他人の需要に応じて行うものをいいます。(第2条第1項各号より)

 

1号業務
施設警備や保安・巡回といったような、住宅・事務所等における盗難などの事故発生を警戒し防止するのが業務になります。

おおよそ、警備業務の需要の半分を占めています。

この区分には空港の保安警備も含まれています。そこでの金属探知機やX線検査による機内持ち込みの手荷物等の監視も担当します。

他には、契約会社の防犯カメラ、センサーなどの機器の設置、火災発生時の避難誘導、不法侵入者の逮捕といった難しいものも業務となります。

 

2号業務
車や人の通行などに際しての、交通誘導、危険の回避・事故防止を目的とした業務になります。

工事現場や駐車場などの「交通誘導警備」や、コンサート会場・祭り・マラソン大会などの大きなイベントでの、安全のために案内や規制を行う「雑踏警備」などがこれに該当します。

 

3号業務
日本の流通や経済に貢献している業務になります。

犯罪の標的となりやすい現金・貴金属や美術品などの「貴重品運搬警備」や、原子力の関連会社との重要な打ち合わせで行われる「核燃料物質等危険物運搬警備」が含まれています。

 

4号業務
護衛(ボディガード)と呼ばれる「身辺警備」を指しています。

政治家や芸能人・スポーツ選手などの個人や所属事務所と契約し、身体への危害の発生を、その身辺において警戒・防止するのが業務になります。
誘拐やストーカーといった犯罪に対しては、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)の活用や送迎などといった業務も行っています。

 

警備員の制限について(第14条第1項)

「警備業法」の第14条「警備員の制限」の中で、第1項では「十八歳未満の者または第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となってはならない」、また第2項では「警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない」と定められています。

 

これは、第1項で定める者については、警備業務を適正に実施することが期待し得ないと考えられたからです。

 

簡単に言いますと、「18歳未満の者・破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者」が該当するということになります。

 

その他にも、「禁錮以上の刑、または警備業法違反による罰金刑を受け、その執行を終わる等してから5年を経過しない者」や「最近5年間に、営業停止命令等違反、または警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為をした者」も含まれますので注意してください。

 

さらに暴力団員やドラッグの中毒者などや、心身に障害があり警備業務を適正に行えない人も除外になります。

 

警備業者等の責務について (第21条)

「警備業法」の第21条において「警備業者等の責務」の中の第1項では「警備業者及び警備員は、警備業務を適正に行うようにするため、警備業務に関する知識及び能力の向上に努めなければならない」、また、第2項では「警備業務を適正に実施させるため、この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない」と定められています。

 

警備員に必要な教育は、「新任教育」「現任教育」に分けられています。新任教育においては「基本教育」と「業務別教育」を併せて20時間以上の実施が決められています。

 

要するに、警備業者は新任教育や人材育成を義務づけられているということになります。

 

「基本教育」
法令の知識や護身術、怪我の応急処置、警察機関との連携等々、警備員として最低限身につけなければならない知識やノウハウを習得します。
テキストを使った講義と敬礼や駆け足などの訓練を含めた実技の形で構成されています。

 

「業務別教育」
先に述べました1~4号までの業務内容に応じて、警備員指導教育責任者が教育に当たります。
各社で計画している業務別教育時間数の1/2まで(上限5時間)は実際に仕事をする警備会社での実地教育が認められています。研修期間中でも最低賃金以上の手当が支払われます。

 

下記は業務別教育の詳細です。

よくある警備業法違反事例について

ここでは、警備会社における、よくある警備業法違反事例と予想される営業停止処分などの内容についてみていきます。

 

警備員の違法派遣

「警備員の数が足りず、違う会社の警備員に応援にきてもらって、派遣してしまった」というような事例です。

 

警備業務についての労働者の派遣は労働者派遣法違反になります。また、それについて警備業法上の行政処分が課されます。

 

違法派遣事例は、派遣した方も派遣を受けた方も、営業停止処分が課されることになります。

 

違法派遣事例の発生を防止するには、警備業務請負契約の内容を、警備先の顧客と自社の2社間での契約にせず、応援に来てくれる警備会社も加えた3社間の契約にしてください。

 

3社間での契約を作れば、違法派遣にはならないです。

 

現場に配置する警備員が足りなくなってしまった場合の対応する方法や、3社間の契約をする場合の契約内容などを普段から明確に準備しておくことで予防につながります。

警備員への教育懈怠

「新しい現場に配置する警備員の新任教育が間に合わなかったので、教育を受けさせないままの状態で、現場に配置してしまった」という事例です。

 

この違反に関しては、基本的に「違法派遣」と同じ処分となります。しかし、「営業停止」においては少し内容が異なってきますので注意してください。

 

教育懈怠の発生を防止するには、警備員に対する教育の進捗状況を確実に管理する必要があります。

 

また、現場配置までに教育が間に合わないような警備員については、現場に配置しないという決断をすることが必要になります。

 

 

教育自体はやっているが、教育時間が少し足りないという場合もありますが、普段から法定通りの時間数をきちんと教育することを徹底しておかなければ、だんだんいい加減になってしまいます。

 

教育懈怠は、急に新しい現場の依頼を受けたときに、教育が間に合っていないにもかかわらず警備員を現場に配置してしまうことにより、発生することが多いです。

 

そのため、急に新しい依頼を受けたなどの場合に、応援に来てくれる警備会社をあらかじめ確保しておいてください。

 

2社で新たな現場に対応するといったことも、予防策になります。

教育実施簿の虚偽記載

「立入検査に対応するために、実際は教育を行っていない警備員について、教育を行いましたという嘘の記入を教育実施簿にしてしまった」という事例です。

 

虚偽記載への行政処分は非常に重いものになります。

 

教育実施簿の虚偽記載については、各都道府県の公安委員会が処分基準を定めています。

そこでは、営業停止処分になるとされています。

 

 

しかし、実際ここ数年は、営業停止処分だけでなく、認定証の返納まで命じられてしまうことが通常となっています。

 

なぜなら、教育実施簿の虚偽記載は、行政処分だけではなく罰金刑が科されるところ、警備業法8条2号で、罰金刑を科された警備業者に対しては認定証の返納を命じることになっているからです。

 

このように教育実施簿に虚偽の記載をしてしまった時の警備業者のペナルティなどはとても重要なものになっています。

 

ですから、絶対に虚偽の記入をしないよう、教育実施簿を作る人に日ごろから指導していくことが必要になります。

 

警備業法施行規則の改正について

部分的に改正されているところがあるのでご紹介します。

教育時間数の変更

新任教育
30時間→20時間
現任教育
年2回8時間ずつ→年1回10時間

このように変わりました。(令和1年8月30日付 公布とともに施行)

教育におけるe-ラーニングの導入

今までは指導教育責任者が直接講義を行ったり、DVDなどで講義を行ったりしていました。
これからはe-ラーニングも導入可能になりました。

その他

▼検定合格者(空港保安及び雑踏警備業務)の配置基準の見直し
▼登録講習機関による講習会の実施基準の見直し

詳しく知りたい方はこちらのホームページを参考にしてください。
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/police/keibigyousekoukisoku.html

まとめ

警備員になるのに当り、警備業法はとても重要になります。

 

罰則など含め厳しい部分が多いですが、人々の命や財産を守るための大切な法律です。

 

警備業法をよく勉強し、すぐれた警備員を目指してください。