警備員の使う無線(無線機)とは?種類や使い方について

はじめに

警備業には様々な業務がありますが、複数の警備員が離れて立っていることも多く、お互いの位置が見えない現場もあります。

例えば施設警備での情報連絡や交通誘導での確認作業など、無線は警備員にとって欠かせないものです。

 

今回は、警備員が使っている無線(無線機)の種類や使い方などについて解説していきたいと思います。

 

 

携帯やスマートフォンではなく無線機が使われる理由

現在では、携帯電話やスマートフォンが身近な連絡手段のため、無線機を用意しなくても対応できるのでは、と思う方もいるかもしれません。

しかし、携帯電話やスマートフォンは毎回、相手の連絡先を表示し、相手を呼び出してから用件を伝える必要があります。

また、現場の全員に情報を回したい場合には大きな手間がかかってしまいます。

 

無線機は、電波を使って離れた場所の音声をやりとり(無線通信)することができる装置で送信ボタンを押すだけで相手に連絡ができます。

また、複数の人数でも同じチャンネルに合わせれば、一斉通信をして情報を共有することも可能です。

そのため警備業の現場では、他の警備員との情報共有や連携を取るために無線機が使われています。

 

 

無線機の種類

警備員が使用する無線機は主に2種類です。

 

特定小電力トランシーバー

特定小電力トランシーバーは、無線機(「トランシーバー」「インカム」ともいう)のひとつで、通信距離の短い無線機をいいます。「特小」という名前でも呼ばれています。

電力消費が少ないうえ本体は軽く、価格も安いです。

 

通信距離は200mほどで障害物に弱いという点はありますが、免許や登録は不要で、誰でも使用できます。

近くに連絡を取り合う相手がいる場合や、障害物のない見通しのよい所で警備をする場合などに使います。

 

業務用無線機

業務用無線機は特定小電力トランシーバーよりも電波が強いため、複数の階や別棟との通信、屋内と屋外での通信など障害物の多い場面で使用されています。

通信可能なエリアが広く通信は安定していますが、電力消費が多く、本体が重いという特徴があります。また、特定小電力トランシーバーよりも価格が高いです。

車載型や固定型、携帯型、デジタル無線機などの種類があります。

 

警察や消防、タクシーなどの業種でも使われているものですが、強い電波を発する業務用無線機の使用には免許申請が必要になります(会社によっては申請を代行してくれることもあります)。

 

※「電波法」の法改正により、一部の特定小電力トランシーバーをはじめアナログ無線機は2024年11月30日に廃止され、デジタル無線に移行することが決まっています(2022年11月現在)。

2024年12月1日以降、該当するアナログ無線機は所持していても法律で使用することが禁止されるため、アナログ無線の廃止手続き、デジタル無線機への買い替えなどが必要になります。

 

 

業務ごとの使用場面

ここからは、警備の業務内容ごとに無線を使用する場面をみていきましょう。

 

1号業務

施設警備とも呼ばれる警備業務で、オフィスビルや商業施設などの警備をします。一般の方がガードマンという言葉をイメージするような警備業務です。

駐車場などの見通しがきく場所や、警備範囲が狭い場合は特定小電力トランシーバーを使います。

それより規模が大きく障害物がある場合は業務用無線機を使用します。

 

2号業務

雑踏警備や交通警備を行う警備業務で、車や人の流れを適切に誘導・警備します。

状況に合わせて特定小電力トランシーバーも業務用無線機も使用します。

屋外での業務が多いため、雨にぬれても大丈夫なように防水機能のあるタイプが向いています。

 

3号業務

現金や貴金属などの貴重品を積んだ車を警備し、チームで業務に当たります。

車内で無線を使うため車載型の業務用無線機を使用します。

現金回収の際は持ち運びできる携帯型が使われます。

貴重品運搬という業務上、盗聴されることがあってはならないため、デジタル無線機を使い盗聴を防ぎます。

 

4号業務

4号業務は要人警護、つまりボディーガードを指します。

使用する無線機は盗聴防止機能があり、スーツの下に隠れる小型で目立たないタイプが適しています。

また、咽喉マイクという、マイク部分がワイシャツの襟で隠れるものも使用されます。

 

 

無線機の使い方

最後に、施設警備や交通警備などで使用される一般的な無線機の使い方を、ポイントや注意点を含めて解説します。

 

・無線機はチャンネルを合わせると通信ができるようになります。

チャンネルが合っていなければ無線機を通して送受信ができないため、注意が必要です。業務前に必ず通信を行う現場の警備員同士で「チャンネル合わせ」を行います。

 

・連絡をする際は、送信ボタンを押します。

送信ボタンを押した直後は相手に声が伝わらないため、1~2秒、間をあけてから話し始めるのがポイントです。

連絡を受けた側は、内容を復唱して、連絡を確認したことを伝えるとよいでしょう。

 

・1人に向けた内容の連絡でも、同じチャンネルに合わせた無線機の所持者全員に連絡は聞こえます。

1人が話している間は他の人が発信することができないため、連絡内容は短く簡潔に伝えることが重要です。

 

・無線が混み合って聞き取れない(通信中に他の警備員から別の知らせが入るなど)ことも発生するため、フォローし合って業務を進めます。

連絡を聞き取れなかった警備員に、聞こえた人が内容を伝えることで、共有する連絡が分からず困るという事態を防ぐことができます。

 

まとめ

警備業の現場では、警備員同士の連絡手段に無線(無線機)が使われています。

無線機は、送信ボタンを押すと相手と通信ができ、同じチャンネルに合わせておいた複数人と情報を共有することも可能です。

 

使用する無線機は、主に特定小電力トランシーバーと業務用無線機の2種類です。

車載型や携帯型、防水機能・盗聴防止機能が備わっているものなど様々なタイプがあり、現場によって使い分けされています。

 

警備の業務では、連絡を素早く的確に行うことが必要とされます。

無線機を使用して通信を行う際は、短く簡潔に、落ち着いて情報を伝えるように心がけましょう。