「警備員」と「守衛」の違いについて

はじめに

公共施設や病院、学校やオフィスビルのような施設に訪れた際、出入口での監視や、建物の巡回などをして働く人の姿を見かけることがあると思います。

 

施設には欠かせない仕事ですが、実際に勤務しているのが「警備員」の場合と、「守衛」の場合があることをご存じでしょうか?

「警備員」は警備業に当たり、「守衛」は警備業には当てはまりません。

 

外部からは同じように見えるかもしれませんが、両者を比較すると大きな違いがいくつかあります。

今回は、警備員と守衛ではどのような点が異なるのか解説していきたいと思います。

 

 

大きな違いは4つ

施設では、出入口の監視を行ったり、建物を巡回したりする仕事が必要とされています。

そのほかにも、不審者対応や盗難防止、来訪者の受付などの業務が行われており、警備員と守衛の仕事内容は似ているといえます。

 

どちらも施設を守るという役割の仕事ですが、細かくみていくと次のような違いがあります。

雇い主が異なる

警備対象が異なる

警備業法による規制があるか、ないか

研修の義務があるか、ないか

それでは、この4つの違いについて順番に解説していきます。

 

雇い主が異なる

警備員と守衛では「誰に雇われているか」という点が異なります。

 

〔警備員〕警備会社によって雇われている。指揮命令権(※)は警備業者にある。

(※)労働者に対し、業務上の指示を行う権限のこと。

<雇用の流れ>警備会社➡警備員を直接雇用

<勤務までの流れ>施設の管理者➡警備会社に依頼警備契約を結ぶ➡(警備会社に雇用されている)警備員が施設に配置される。

警備業は他社の依頼(契約)により行われる仕事で、基本的に請負業務です。

 

〔守衛〕施設の管理者によって雇われている。指揮命令権は施設の管理者にある。

<雇用~勤務までの流れ>施設の管理者➡守衛を直接雇用➡守衛として施設で勤務

基本的に、外部に依頼せず自社で警備業務(募集・雇用・教育)を行う場合は、警備業には当たりません。

 

 

警備対象が異なる

警備対象の範囲が警備員と守衛では異なります。

 

〔警備員〕「施設警備」は警備業務の区分のひとつ。「1号警備」とも呼ばれる。

警備業には施設警備のほか、交通誘導や雑踏警備(2号警備)、輸送警備(3号警備)、身辺警備(4号警備)があり、業務によって人や財産など様々なものが警備の対象になります。

 

〔守衛〕施設の警備を行う社内業務。

施設が警備対象で、基本的に施設以外の警備(警備業での2号・3号・4号警備)を行うことはありません。

 

 

警備業法による規制があるか、ないか

警備員と守衛では法律(警備業法)による位置づけが異なります。

 

〔警備員〕警備業法による規制が「ある」。

施設と契約し警備を行う場合は「警備業」に当たります。そのため「警備業法」という法律を守る必要があります。

・服装(制服)や持ち物(装備)については、警備業法による細かい規定があります。また、都道府県の公安委員会に届け出を出したものしか着用ができません。

・警備業法によって、欠格事由(※)の該当者は警備員にはなれません。

 

(※)警備員にはなれない人の条件。18歳未満、アルコールや薬物の中毒者、直近5年以内に警備業法に違反した人など。

 

〔守衛〕警備業法による規制は「ない」。

社内業務として「警備」を任せられている施設の社員(スタッフ)という扱いになります。そのため、警備業法は適用されません。

・服装や装備をはじめ、欠格事由の制限も特にありません。雇い主による面接はありますが、服装の決まりなどは施設によって異なります。

 

 

研修の義務があるか、ないか

警備業法で定められた研修の義務が警備員と守衛では異なります。

 

〔警備員〕研修の義務が「ある」。

警備業法によって定められた研修(法定研修)を受けた人だけが警備員になれます。

採用後に受ける新任研修(短期アルバイトでも必要)や、警備員になってからは現任研修を受講する必要があります。

 

〔守衛〕研修の義務は「ない」。

警備業には当たらないため、法定研修を受ける義務はありません。雇用される会社によっては、独自の研修が行われる場合があります。

 

▶施設警備について詳しくはこちらへ。↓

「施設警備とは?仕事の内容、資格などを解説」

(2022年4月13日)記事リンク

 

まとめ

上記のように、警備員と守衛は外部からは同じような仕事に見えるかもしれませんが、大きな違いがあることが分かります。

警備員は、警備会社に所属し現場に派遣(出向)されている人のことです。

警備業では、施設警備のほかに交通誘導、雑踏警備、輸送警備、身辺警備と様々な業務を行っています。

また、警備員には警備業法による規制や研修を受ける義務が発生しますが、細かいルールや法定研修があるということは、しっかりとしたマニュアルや教育体制が整っているということでもあります。

 

警備員の仕事は未経験からでも始められます。研修などで業務の知識を得て、現場で経験を積んでいくことでスキルアップやキャリアアップも見込める職業です。

施設警備だけでも多くの現場があります。公共施設や病院、学校やオフィスビルなど現場によって業務内容が変わってくるため、自分に合う働き方を探してみてはいかがでしょうか。