工事現場の交通誘導、看板や特殊車両について

はじめに

道路工事や建設工事などで、歩行者や一般車両、工事車両に対して誘導を行う業務を「交通誘導警備」といいます。

工事現場では、警備員の誘導のほかに看板などの案内が用いられています。

使用される看板やバリケード、コーンなどは「保安用資機材」といわれます。

 

今回は、工事現場での交通誘導について、主な資機材や工事の特殊車両、業務中の留意点も合わせて解説していきたいと思います。

 

な資機

交通誘導の現場で使用されている資機材は、矢印板やコーンなどの「保安用資機材」と、手旗・無線機など警備員が身に付けて使用する「その他の資機材」に分けられます。

 

「保安用資機材」には次のような種類があります

〔標示板〕〔道路標識〕など

  • 標示板(工事中看板、まわり道案内板など)……工事区間の起点や終点に設置される、工事についての表示です。
  • 道路標識(工事予告、徐行など)……交通量や現場の状況により、必要に応じて設置される表示です。

 

〔矢印板〕〔クッションドラム〕など

  • 矢印板(進路指定標示板)……交通流の安全な誘導を促すため、工事区間に必要に応じて設置されるものです。
  • クッションドラム(衝突吸収緩衝材)……内部に水袋や砂袋が入っており、車両など衝突時の衝撃を緩和するものです。

 

〔バリケード〕〔セフティコーン〕〔コーンバー〕など

  • バリケード……工事の作業区域を周囲から明確に区分するため、作業区域を囲むように設置するものです。
  • セフティコーン……工事の作業区域を周囲から明確に区分するため、作業区域を囲むようにバリケードなどと組み合わせて設置するものです。
  • コーンバー……設置されたコーン同士をつなぐバーで、立ち入り禁止の区切りや、列の誘導の整理などに使用されます。

 

〔警告灯〕〔回転灯〕〔工事用信号機〕〔誘導ロボット〕など

  • 警告灯、回転灯……車両に対し、車線規制が行われていることの注意を促す目的で使用されます。
  • 工事用信号機……道路工事などの施工者が安全を期するために任意に設置するものです。一般的には、危険防止のため警備員の誘導と併用されます。
  • 誘導ロボット……高速道路などで交通誘導員の補助として、車両に対し通行車線の変更を促す目的で使用されます。固定された片腕に回転灯、スイングする片腕にLED(または旗)が装備されています。

 

上記の機材以外にも、様々な標示板やネオンチューブ(ネオン風に光るチューブ状ライト)などが使用されています。

交通誘導を行うにあたり資機材の機能や使用方法などを知ることは、現場の安全確保や歩行者・一般車両との接触防止などに役立ちます。

 

保安用資機材は工事を行う業者が設置することが一般的ですが、交通誘導の際に設置・撤去作業が含まれていることもあるため、現場で警備員が行う業務の範囲を事前に確認しておくことが必要です。

 

 

なお、「その他の資機材」には、〔警笛〕〔手旗〕〔大旗〕〔誘導灯〕〔ヘルメット〕〔安全ベスト〕〔無線機〕〔拡声器〕などがあります。

 

主な特殊車両

工事現場では、工事業者が作業を効率的に進められるよう様々な特殊車両が使用されています。

 

  • ブルドーザー……車体の前に取り付けられたブレードで土を削ったり、運んだりする車両です。タイヤの代わりにキャタピラが付いています。
  • パワーショベル……長いアームの先に取り付けたバケット(ショベル)で、土や砂利を掘ったり、掘った土をダンプカーに積み込んだりする作業に使用されます。ショベルはオペレータ側向きに取り付けられています。
  • ロードローラー……道路などの地ならしに使用される車両で、車輪は前後とも鉄輪になっています。
  • クレーン車……大きな荷物や建設資材などを動かしたり、高所へ移動したりする作業に使用されます。

 

その他にも、コンクリートミキサー車、高所作業車、照明車など様々な車両が利用されています。

 

交通誘導員が特殊車両の操舵特性や作業特性などを把握することは、歩行者や一般車両への誘導だけでなく、工事作業者への危険予知や接触防止にもつながります。

 

特殊車両についての留意事項

特殊車両を使用している現場では、次のような点に気を付けましょう。

 

①オペレータの死角や車両の危険範囲などに入らない。

 

②前後の移動を繰り返して作業する車両などもあるため、車両の作業特性を十分理解する。また、作業状況に応じて移動し、安全な誘導位置を選ぶ。

 

例えば、パワーショベルには、

・車体上部だけを旋回させることができる

・オペレータ側にショベルを向けて作業する(作業時の後進は、本来の前進に当たる)

というような特徴があります。

 

「ヒヤリ・ハット」事例

ここで、ひとつのヒヤリ・ハット(※)事例をご覧ください。

※「ヒヤリ・ハット」とは、“重大な事故に発展したかもしれない危険なできごと”を指します。

 

<厚生労働省「未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル 警備業編(2020)p19(PDF24p)>

・表『ヒヤリ・ハット事例の活用【資料】』↓

https://www.mhlw.go.jp/content/000611912.pdf

事例から分かるように、工事現場では周囲の人や車両に対するスムーズな誘導も重要ですが、自分自身の安全を守ることも大切です。

 

工事現場での留意事項

工事現場全体については、次のような点に気を付けましょう。

 

①工事車両などが現場に右折で入るため、円滑な交通を止めることのないようにする。

(例)対向車両の通過待ちで、後続車両の通行を妨げているとき……必要によって対向車両の停止を求めて工事車両を誘導する。

 

②工事現場と車両を停止させる場所とは十分な距離をおき、対向車両がすれ違う際の妨害にならないようにする。

 

③盛土や路肩など地盤の軟弱な場所へ車両を誘導しないよう注意する。やむを得ない場合は、運転者に慎重に運転するよう状況を伝える。

 

④工事車両などの出入りに際しては、出入りゲートに接触しないよう高さ制限に注意する。

 

〈参考文献:「交通誘導警備業務の手引」社団法人全国警備業協会(2008)〉

 

まとめ

工事現場での警備員の交通誘導は、歩行者や一般車両、工事車両に対して誘導を行う業務です。

 

設置されている保安用資機材(看板やコーンなど)や、使用されている特殊車両の特徴を知ることは歩行者や一般車両への危険予知・接触防止などに役立ちます。

また、工事車両や工事作業者など、現場全体の安全確保にもつながります。

 

スムーズな誘導を心がけながら、自分自身の安全も守れるよう、周囲に十分注意して業務を行いましょう。