M&Aをやってみたい経営者はご用心!
中小零細企業のM&A歴史
2000年頃~M&A(株式譲渡)は大企業だからこそできるというような特権的な印象がありました。
事実、中小零細企業に対してM&Aの機会がなかなか訪れることはありませんでした。
知合い経営者同士での株式譲渡はありましたが、M&A仲介会社(以下、仲介会社)から中小零細企業に案件がもたらせる事は珍しかったのです。
M&A仲介会社から、中小零細企業は蚊帳の外に置かれていたと表現しても過言ではありません。
何故だと思いますか...?
理由は仲介会社が一体どうやってお金を稼いでいるのか。
この理屈に目を向けなければ答えにたどり着けません。
仲介会社は株式譲渡額の〇〇%を手数料としています。
すなわち株式譲渡額が大きければ一撃高設定価格の手数料を手に入れることが出来ます。
という事は、一撃の大きい大企業がおのずと対象となり、
株式譲渡額が低い中小零細企業は相手にされてこなかったという側面がありました。
また中小零細企業側にも要因がありました。
2000年頃からマスメディアで騒がれた用語があります。
【敵対的買収】【TOB】です。
これらはM&Aのひとつの戦略なのですが、あたかもM&Aそのものが、敵対的買収そのものという印象が与えられていました。
それが今日に至る中小企業経営者の、M&Aに対する消極的な要因であります。
しかし、2010年頃からM&Aというものが商品化していきます。中小零細企業と中小零細企業を繋げ合わせるM&Aが急増してきたのです。
増加理由は事業承継です。
(なぜ事業承継なのかはここでは省略します)
中小零細企業同士のM&Aは仲介会社にとって決して【おいしい】案件ではありません。
なぜなら手数料商売を生業とする仲介会社にとって、中小零細企業同士の株式譲渡価格は安価だからです。
そこで仲介会社は発想を変えました。
中小零細企業の悩み(事業承継)解決をM&Aという手法で商品化する事にしたのです。
薄利多売ではありますが【後継者不在】を理由に中小零細企業同士結びつけているのです。
日本の企業のおよそ97%が中小零細企業と言われています。その企業の多くが【後継者不足】で悩んでいます。
この商品化によって中小零細企業がM&Aの舞台に躍り出たのです。
なぜあなたの手元にM&Aの案内が届くのか
あなたの会社にM&Aの案内が来るのは業績順調の企業だから...などではありません。
あなたは仕入れなのです。あなたの手元に頻繁に届くM&Aの案内は、あなたの会社が優秀だという表れではありません。数撃ちゃ当たる仕入れ案件にしか過ぎないのです。
とはいえやってみたいM&A
そうはいっても事業拡大や挑戦が経営者の醍醐味や魅力です。M&Aはそれらを補ってくれるカンフル剤です。
また今まで積んできた経験をぶつけるのに最適な挑戦の場がM&Aでもあります。
M&Aで勝負をかけたい!そう思う経営者はぜひ挑戦してください。
ただしこのような心持ちがあれば、いつか必ずそこから崩壊するので用心ください。
・【M&A】をやっていると言いたい
・【ストロングバイヤー】と呼ばれたい
・M&Aを数件経験すると芽生える【やり手】の雰囲気に漂いたい
M&Aは承認欲求を満たす場ではありません。
そういう気持ちが先行すると、気付かぬうちにM&A仲介会社の言いなりになってしまいます...。
仲介会社を信用しきらず上手に操作する
仲介会社から案件が届き、売り手先の調査(DD)を始める頃には、仲介会社の担当者が決まります。
大手仲介会社では売り手と買い手に別々の担当が付く場合もあります。
不動産売買と非常に近い印象です。
M&Aの経験が無いほどに、担当者の言われるままの情報を鵜呑みにしてしまいます。
ここで注意しなければならないのは、彼らはあなたにM&Aを成立してもらう事が目的であるという事です。
あなたがM&Aを通じて企業成長していくという事は、彼らにとってさほど重要ではありません。
そのために【ストロングバイヤー】の気持ちの良い言葉を浴びせ、ただただ気持ちよくさせて成立まで導いていく...このような担当者が非常に多く存在します。
調査時で必要なのは、あなたが【違和感】を感じ取れるかです。
それは売り手先企業もちろんですが、仲介会社の担当者に対しても同じです。
M&Aを成立させるために、すべての情報を出す会社はほぼありません。
買い手先に都合のいい情報を並べ、売り手として都合の悪い情報は極力伝えたがりません。
すなわち買い手が最も欲しい情報をひた隠している売り手から、違和感を感じ取れる能力が必要です。
売り手:株式譲渡を完遂して一刻も早く終わらせたい。
買い手:株式譲渡が始まり。だから売り手が隠している情報を少しでも多く引き出しておきたい。
仲介会社:うまい事まとめて成約させ、(営業担当は)たっぷり手数料を頂きたい。
それぞれの目的が全く違う事をよくよく理解して進めていきましょう!
あなたが事業譲渡した後の事なんか、仲介会社は全く考えてくれませんよ!
M&Aはご安全に!